Notte stellata – 星の降る夜


星の降る夜に、2人は湖を見下ろす丘で、星空を見上げていた。


大きな湖は、その湖面を鏡のようにして、夜空に輝く星を映しだしていた。
辺り一帯は静寂に包まれ、2人の吐息以外はほとんど何も聞こえなかった。
空気は冷たく澄んでいて、肩を寄せて佇む2人を、星の光が優しく照らしていた。





「なんて綺麗なの….」

うっとりした表情で、そう呟いたサラに、エンリコは自慢げに答えた。
「ここは周りに明かりがなくて、星が綺麗に見える、僕のお気に入りの場所なんだ」

市街地から離れたその場所は、星を見るには絶好の場所だった。

「あ、流れ星!」

サラが少し興奮気味に呟いた。

小さな流れ星が、ほんの一瞬だけ夜空に姿を見せ、儚く消えた。



「流れ星なんて初めて見たわ! でも、本当に一瞬で消えちゃうのね。願い事をいう暇もなかったわ」
「そう。ほとんどの流れ星は、ほんの一瞬しか見えないんだ。だから、流れ星に3回願いを唱えるのは至難の業だよ」

2人は少し肌寒さを覚えながらも、繋いだ手の温もりを確かめながら、寄り添い合って夜空を見上げていた。
その日の星は、いつにも増して綺麗だった。時折小さな流れ星が、湖の上の空に降り注いでいた。

サラが星空に夢中になっているのをみて、エンリコは、サラに気付かれないように、内ポケットに隠し持っていた指輪ケースを、片手でそっと取り出した。
エンリコの胸は、波打つような鼓動で震え、体は熱を帯び、寒さなど忘れていた。


指輪ケースを手にし、緊張を抑えて冷静を装いながら、そっと切り出した。





「サラ、僕と、けっこ・・・」



そう言いかけたとき、眩い光が夜空に飛び散り、辺り一面をまるで昼間のように明るく照らした。
大きな流れ星が、湖の上空で煌めく光を放ちながら、長い尾をひくように、東から西へと空を流れていった。




「わぁ!!見て、すごい!!」


サラは、長く輝く流れ星を指さして、興奮気味に叫んだ。
ほんの10秒程の出来事だったが、実際よりも随分と長い時間のように感じた。


「あんなにすごい流れ星が見れるなんて、思ってもいなかったわ!」
「何か願い事はできた?」
「うん!星をください。星をください。星をください。って3回言えたよ」
サラは笑いながら、そう答えた。


「こんなに綺麗な星を見ていたら、1つでいいから欲しいな、って思って。どれか1つでも自分のものにできたらなぁ。あ、でも、やっぱり、1つじゃなくて、沢山欲しいな。あの白い星も、あのピンクの星も、あの赤い星も!」


子供のように無邪気な笑顔で、そんな話をするサラを、エンリコは優しく見つめていた。
どこか心が安らぐような、そんな愛おしさを感じた。




エンリコは、少し考えてから、手に持っていた指輪ケースを、サラに気付かれないように内ポケットにしまった。


そして、こう語りかけた。